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先輩

先輩は、イラストレーション部という中高一貫のクラブの先輩で、当時私は中学2年生で先輩は高校2年生だった。
初めて行った合宿で、先輩は絵本を買っていた。くまのがっこうの、ジャッキーのぱんやさんという絵本で、先輩は寮に帰ってからその絵本をみんなに読み聞かせてくれた。
絵本はいうなればとても普通の、かわいい絵本で、まあ好きだった。でも、先輩が読み聞かせてくれるという点でもうすばらしい絵本に見えた。
実際、みんなで見ていたのもあって、たぶんその絵本が持つ面白さよりも面白い読み聞かせになっていた。
(そもそも、読み聞かせ、というのがとても好き。小さいころから、両親が読み聞かせをしてくれて、自分で読むよりもその読み聞かせのほうがはるかに面白かった。それはテレビ番組などもそうで、両親がつけっぱなしにしたアニメをひたすら見ていた。見ていたというか、眺めていた。これも読み聞かせ、だと思う。この読み聞かせ、は今もひきずっている、それを感じたのは最近で、CDを人に借りたとき、借りたものばかり聴いてしまうことに気づいてから。そのCDを聴いているとき、貸してくれた人のことを思い浮かべてしまう、それが嬉しい。つまり、読み聞かせ、というのがとても好きということ。私のそばで誰かがペラペラと本をめくる行為も読み聞かせにふくまれる。)
先輩の読み聞かせてくれる絵本がとくに好きになった私は、先輩をそれ以上に好きになって、先輩にくっついているようになった。
くっついているくせにあんまり話さなかったけれど、絵本の話はたくさんした。絵本の話ばかり盛り上がっていたように思う。
私が絵本を作りたい、と言ったら、先輩が一緒に作ろう、と言ってくれて、それからもっと先輩にくっつくようになった。
放課後も、画材を買いに行ったり、打ち合わせをするようになって、部活外でも先輩とくっつくようになった。(家が厳しくて、放課後もあまり友達と遊ぶなんてなかったし、まして休日なんて片手で数えることもしなくていいくらいしか遊んだことがなくて、だから特別で驚くような時間だった。)
話すたびにどんどん先輩が好きになっていって、先輩は違う校舎(中高一貫だったけど、高校2年生、3年生は違う校舎)だから私のロッカーに手紙をいれておいてくれたりして、もう本当に大好きで仕方なかった。
作業はつらかった、時間がなくて、寝ないでやった。でも先輩が好きだからしんどくはなかった。先輩が辛そうなの見て、そういうのが全部ふっとんだ。
出来上がったら、展示会で、圧倒的なインパクトを残していた。好評で、当たり前だ、と思ったけど(先輩のすごさは目をつぶってもわかる)、なんだか新鮮で、すごくすごく嬉しかった。
製本をして、先輩が、その本をくれた。先輩は、コピーでいい、と言った。私は、でも先輩に持っていてほしいと言ったら、先輩は、私に持っていてほしいんだと言った。
その展示会で、先輩はクラブを引退した。展示の片づけをして、送別会みたいなものをした。先輩に花束や、寄せ書きを、高校1年生の先輩達があげていた。
私はじっとこらえていたけど、先輩に抱きついてしまった。あほみたいに先輩のブレザーをぐしょぐしょに濡らした。
先輩は「明後日会えるのにー、泣かないの」と言って笑顔で私の頭をぽんぽんたたいて、泣いていた。
私は喉がつまって嗚咽をもらしながらゆっくりと歩いて駅に向かって、友達が貸してくれたハンカチをずっと握った。
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